March 16, 2010

ブラ下がり健康法

どうでも良いことだが,子供の頃,伯父の家の物置で「ぶら下がり健康器」を見つけたことを思い出した.
当時は「ぶら下がり健康器」の名前すら分からなかったので伯父に聞いてみた.以下のような会話だったように記憶している
「伯父さん,これは何」
「『ぶら下がり健康器』だよ.ぶら下がることで健康になるんだ.ぶら下がり健康法ってやつだな.前に流行っていたんだよ」
いろいろな健康法があるが,「ぶら下がり健康法」は凄いと思う.両手でぶら下がり,地面に引っ張られて,健康まで引っ張り出されるとか,そういうあれか.
理屈はともかく,ぶら下がり健康法には何でも解決できそうな勢いがある.

「いやー,いくら頑張ってもできないから,もう諦めようかと思ったんですがね.信じられないことに,できたんですよ.ぶら下がり健康器のお陰です.妻も一緒に喜んでいます」
そう語るのは,中本保さん(38歳).以前から子供が欲しいと思っていた中本さん夫妻.保さんは「ぶら下がり健康器」のCMを見て,早速申し込んだという.
「正確には,妻が産んだのは,子供じゃなくて,卵なんですけどね.喜びは変わりませんよ」
「私から卵が生まれるなんて信じられませんでした.でも,友達から子供を産むのは大変だって聞いていたんですけど,卵だと楽に産めました.今も卵を温めているんですよ.お医者さんの話だと,来週には孵化するだろうって」
ぶら下がり健康器のお陰で卵を授かった中本さん夫妻.幸せの真っただ中だ.

「もう凄かったんですよ,ライオンがね,私のパンチで飛んで行ったんですよ.30mくらいかな」
そう語るのはアフリカの少数民族ンバホ族のソチャンマさん(13歳)だ.サバンナを散歩していたらライオンに遭遇.襲いかかってきたライオンをパンチで撃退したという.
「たまたまなんですけどね,狩りで近くを通りかかったンバホの戦士がそれを目撃しまして,村では私の噂で持ち切りです.長老には部族の英雄に推薦して頂けることにもなりました」
ソチャンマさんは満面の笑みを浮かべる.
「もちろん『ぶら下がり健康器』のことは部族のみんなには内緒です」
サバンナの灌木の茂みに隠されたぶら下がり健康器だ.

「面倒なことがある日の朝の目覚めが楽になりましたよ」
そう語るのは伊達忠宗さん.
「参勤交代の朝なんて,もう嫌で嫌でねえ.布団から出られないんですよ」
伊達正宗を父に持つ伊達忠宗さん,参勤交代が何より辛いと苦労してきたようだ.
「参勤交代の日の朝は,母から怒鳴られてねえ.『忠宗,遅刻するわよ.母さん,この前も先生から遅刻が多いって,江戸に呼び出されたんだからね.早く起きなさい』なんて.家老なんて『こんなバカ息子,あの世で正宗公になんてご報告すればいいのやら』って言うんですよ.失礼な人たちですよね」
しかし,伊達忠宗さんの顔は晴れやかだ.
「そんな私ですが,ぶら下がり健康器のお陰で,爽やかな目覚めを迎えることができて助かってます.もう,伊達のバカ息子なんて呼ばせません」

「今まで,臭い臭いとみんなから嫌がられていたんですが,臭くなくなりましたよ」
そう語るのはカメムシの山本源吉さん.
「私には,ピンチになった時に出てくる汁があって,それに悩んでいたんですよね.もちろん,私は出したくなかったんですけど,自然に出てくるんですよ」
臭い汁で悩んでいた山本さん.その悩みは解決したという.
「ぶら下がり健康器のCMを見て,これだと思いましたね.いや,汁が出なくなったわけじゃないんですがね.出てくる汁は臭くなくて爽やかな香りなんですよ.消臭デオドラント効果みたいなものですかね.そう,汁が乾いた後もサラサラなんですよ」
山本さんは顔を綻ばせる.
「偉い昆虫学者の先生が,私を新種として登録することになったんですよ.『スッキリカメムシ』って名前みたいです.臭くて悩んでいる友達がいるんですが,彼らにも薦めたいと思います」

数千年後,未来人は発掘された「ぶら下がらり健康器」を見たら,「古代人からの贈り物.伝説の健康器具.ぶら下がり健康器」のようないい加減なことを言って,ぶら下がり健康器ブームが起こると思う

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March 09, 2010

明日からガス

アスパラガスのガスは,どうでもいい存在なのだろうか.もちろん「アスパラガス」といえば通じるが,「ガス」をとった「アスパラ」でも通じる.「ガス」は,あってもなくてもいい部分なのか.アスパラの盲腸のようなものだろうか.
いや,ガスの部分はいらない部分じゃない.「ガス」は,いらない存在じゃない.いや,その前に「ガス」ってのは何なんだ.

昔,ドイツのある村に仲の良い幼馴染の男と女がいた.男の名前をアスパラ,女の名前をアンナといった.
ある日,その村は戦火に巻き込まれ,アンナは瀕死の重傷を負ってしまった.アスパラはアンナの元へ駆けつけた,アンナの最後の言葉を聞く.
「私,アスパラが,アスパラが好……」
と言って力尽きたアンナ.
意味が分からず「アスパラガス?」と呟くアスパラ.
アスパラはアンナの最後の言葉の意味が分からないまま,彼が栽培している作物に「アスパラガス」と名前を付け,いつまでも忘れないようにしたということだ.

農家の人が適当に育てたら「アスパラ」.農家の人が丁寧に育てたら「アスパラガス」.農家の人がバスのことを考えながら育てたら「アスパラバス」.バス好きの農家の人がバスのことを考えて育てたら「バスパラバス」.

昔,宋に狙公(そこう)といういう男がいた.彼は,飼っている猿に,与える餌について話をした.
「明日から,お前達のエサはアスパラだ.朝に三つ,暮れに四つやる」
すると猿は「何だそれは」と怒った.狙公は少し考え,再び言った.
「よし,それではこうしよう.明日から,お前達のエサはアスパラガスだ.朝に三つ,暮れに四つやる」
すると猿は,たいそう喜んだという.

昔,ドイツのある村に青年と母が,貧しい暮らしを送っていた.青年の名前はアスパラ,母の名前はガスといった.ガスは体が弱く,何年も病床に伏せっていた.
ある日,ガスはベッドにアスパラを呼んで言った.
「この種は,私の夫の形見です.何回か蒔いてみたけど,芽が出なかった.私はもう長くない.何とかこの種を育てて欲しい」
ガスは,アスパラに種を託したその数日後に死んでしまった.アスパラは,苦心の末,その植物の栽培に成功したという.
そして,その植物にシロツメクサと名前を付けたということだ.

「お前って,アスパラガスのガスの部分だよなあ」というセリフを思い付いたが,どう使えばいいのか分からない

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February 18, 2010

グランドフィナーレ

先日,街を歩いていると,露店で野菜を売っていた人が
「本日グランドフィナーレです」
と言っていた.
露店にグランドフィナーレがあるのか分からないが,グランドフィナーレは格好いい.グランドフィナーレを露店ビジネスに積極的に取り入れる野菜売りの人の態度も清々しい.野菜売りから野菜は買わないが,心意気は買いたい.私も野菜売りを見習ってグランドフィナーレを積極的に取り入れていきたい.
いや,その前にグランドフィナーレって何なんだろう.

高校の卒業式.卒業後の進路が原因で別れる男子高生と女子高生.彼は日本の大学に進学し,彼女はアメリカに留学する.
寂しそうに彼女は彼に向って言う.
「私達,これでグランドフィナーレだよね」
彼女の頭の中で付き合って1年半いろいろな思い出が駆け巡り,思わず涙がこぼれる.何か言おうとする彼に,彼女はこう付け加える.
「でも,日本に帰ってきたらグランドオープンもあるかもね」
青春の1ページが増える.

「はい,グランドフィナーレです」
掛ってきた電話に応答するのは,昔から続く大地主の当主グランドフィナーレ源衛門(58歳)だ.
岐阜県のある村で安土桃山時代から続く由緒正しい名家グランドフィナーレ家.地域での評判も良く,グランドさんと呼ばれて親しまれている.現代でも近隣の人は困ったことや悩んでいることがあるとグランドさんの所に相談に行くという.

マサオは20年ぶりに帰ってきた故郷の北海道の空を眺めた.空には沢山のグランドフィナーレが飛んでいる.
「ああ,懐かしいなあ.グランドフィナーレの群れだ」
マサオはグランドフィナーレを見ると故郷に帰ってきたと実感する.幼い時から住んでいた北海道で,いつも目にしていたグランドフィナーレ.マサオは,北海道の外では空を舞うグランドフィナーレを見ることがないということを,故郷を出たときに初めて知った.
屯田兵が飛ばしたグランドフィナーレ.北海道に住む人の心の故郷だ.

京都の嵐山にある小さな神社,グランドフィナーレ神社.日本神話にも出てくる神様の1柱であるグランドフィナーレを祀った神社だ.
昔から「グラフィナはん」と呼ばれ,大切にされている.
神使としてカバが祀られており,神社の池には昔からカバ的な生き物が住みついているらしい.日本で一番カバ臭い神社としても有名だ.

ファッション業界に新風が吹き込まれる.
モテ顔,愛され顔などに続く新たな顔.グランドフィナーレ顔だ.モテや愛されの時代は終わった,グランドフィナーレがファッション業界に君臨.
近い将来,道行く女性の人の顔は,全てグランドフィナーレ顔になると予測されている.

「本日グランドフィナーレです」と言っていた野菜を売る露店は,その次の日も普通に野菜を売っていた.結局,店がグランドフィナーレだったのか,「本日グランドフィナーレです」と言っていた人がグランドフィナーレだったのか.

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February 08, 2010

嬉しいタンカー

ハプニングバーというものがあるということだ.よく分からないのだが,ハプニングが起こるらしい.
どんなハプニングが起こるのだろう.

・寿司を頼んだのにグラタンが出てくる
・しかしよく見たらグラタンではなくてウレタン
・大豆を醗酵させたらウレタンになった
・母親だと思っていた人が父親だった
・父親だと思っていた人やっぱり父親だった
・お魚くわえたドラ猫を裸足で追いかける
・買い物しようと町まで出かけたら財布を忘れる
・磯野かと思ったら中島だった
・しかし中島でもなくてウレタン
・やっぱり磯野もウレタン
・花沢さんはウレタンさん
・結局本当の父親も母親もウレタン

ハプニングバー,ウレタンバーとも言い換えられる.

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January 28, 2010

呉へ集う衆

臥薪嘗胆という言葉がある.昔の中国の故事が元となった言葉だ.
越の王の勾践(こうせん)に父親を討たれた,呉の王の夫差(ふさ)は,毎日薪の上に寝て復讐の思いを奮い立たせて越を討った.一方,敗れた勾践は胆を嘗めて,苦さで敗戦での屈辱を思い出して,夫差を滅ぼしたという故事らしい.
しかし,気持ちを奮い立たせたり屈辱を忘れないために,痛いことをしたり苦い物を口にする必要はないと思う.気持ちを奮い立たせたり屈辱を思い出す方法は他にもある.

「えー,それでは今日も読みます」
呉の王,夫差は毎朝家臣を集めて詩を朗読する.
「『私の雨』
雨降る日には空が泣いている
空は何を思って泣くのだろう
空は何を思って泣くのだろう
泣いているのは空だけなのか
私の頬を流れる涙
私は空と一緒に泣いている
私は何を思って泣くのだろう
私は何を思って泣くのだろう」
勾践が思春期に自分で作って書いた詩だ.
勾践は恥ずかしさで赤面してクネクネと悶えながら読む.聞いた家来もつられてクネクネする.
そして,夫差は父を討たれた恨みを思い出すのだ.

越の王,勾践は何食わぬ顔をして椅子に座っているが,便意を我慢して3時間だ.お腹の弱い勾践はもう気絶寸前.夫差に敗れた勾践は,敗戦の屈辱を忘れないためにトイレに行きたくなってから5時間我慢することにしている.
残り時間は2時間.顔中に浮かぶ脂汗.ああ,トイレに行きたい.でも思い出せ,敗戦の屈辱を,我慢できずに漏らしたときの屈辱を.
勾践の勝率は2割.10回のうち8回は漏らす.
勾践は,だんだんと漏らした時の屈辱感が気持ちがいいと感じ始めている.勾践は未知の領域に一歩を踏み出し始めている.

「領収書をお願いします」
呉の王,夫差は,買い物をすると会計の店員に領収書を頼む.
「かしこまりました.宛名はいかが致しましょうか」
「『青空ドリーム』でお願いします.これは私の本名です」
「えっ,あっ,そうですか」
「そして,本日購入した『おしゃぶり』は自分用です.すぐに使うので包装はいりません」
沈黙する店員.重苦しい雰囲気が店員と夫差を包む.そして,夫差は父を討たれた恨みを思い出す.

真夜中に,城から人に見つからないよう素早く出て行く影.越の王,勾践だ.
勾践は全裸で小銭を握りしめている.近くの自動販売機にジュースを買いに行くのだ.夫差に敗れてからは,敗戦の屈辱を忘れぬよう毎晩全裸でジュースを買いに行っている.
誰かに見つかったら,警察に通報されるだろう.ドキドキとしながら,素早く物影から物影へ.しかし,最近は恐怖の中に,誰かに見つかりたいという気持ちが芽生えてきた.
「ああ,誰かがこの国の王である私を見つけて罵ったら,私はどんな気持ちになるのだろう.そしてその誰かを理不尽に処刑したら,私はどんな気持ちになるんだろう」と考えるとワクワクが止まらない.
勾践はこうやって大人の階段を上る.

呉と越の国の家臣達は,王と共に未知の領域での喜びに目覚めることになる.そして,「呉越同舟」という言葉ができることとなった.
もちろん,「呉越同舟」とは「一隻の舟に変態満載」という意味だ.

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January 22, 2010

ベン洞爺

昼食に弁当を買おうと店を見ていたら,「お母さんの味」や「お母さんが作った」という宣伝文句を見た.自分で料理を作るようになって分かったのだが,私の母親は料理が下手だ.なので「お母さんの味」を思い出したくないし,「お母さんが作った」物を食べたいとも思わない.
誰にでもアピールできる宣伝文句はないだろうか.

バスの運転手が仕事を離れ,作ってみた弁当.バスへの愛情,ガソリンへの思い,バスの大きさを込めて手作り.
「バスの運転手が作った弁当」だ.
ちょっぴり香るオイルの匂いが食欲を刺激する.

「ああ,ここまでだな」
メロスは諦めた.
「親友のセリヌンティウスは今頃凄いことになっているのだろうな」と考えながらメロスは,その場で弁当を広げる.昨日の妹の結婚式で出た残り物を詰めて自分で作った弁当だ.
「でも,俺はここまでがんばったよな.結構走ったし.がんばった俺はここで弁当を食べる権利があるはずだ」
ひとりで言い訳しながらメロスは弁当を食べてお茶を飲む.ちょっぴり「セリヌンティウスの味」がした気がする.
「ありがとうセリヌンティウス.そして,さようなら」

「お前ら,早く弁当を作れ」
とけしかけられる養豚所の豚達.彼らが作るのは「豚が作った弁当だ」.
弁当箱に詰めるのは,昨日まで隣で一緒に弁当を作っていた豚の山田さん.今ではソーセージだ.豚が作り,豚の味がする弁当.明日詰められるのはわが身かと,涙を流して米を詰める.
少し塩味がする「豚が作った豚の味」だ.

岩手県の山中の森に置かれた一つの弁当.遠野の伝承に出てくる妖怪「ベントウヅクリ」が置いた弁当だ.
ベントウヅクリは手製の弁当で人間を誘き寄せ,心からのおもてなしで歓迎する.弁当を食べているとお茶を入れて,おにぎりはもういらないかと尋ねる.
「妖怪の手作り弁当」は懐かしい味がする.

弁当箱を開けたら,サラダだけだったり,焼いたサンマ一匹だけだったりした中学生のときの弁当.文章を書いていたら思い出したくないことを思い出した.

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January 06, 2010

トッケンJr.

「征夷大将軍」の特権というのは何だろうと考えることがある.大友弟麻呂に始まり,坂上田村麻呂や源頼朝,足利尊氏,徳川家康などが征夷大将軍に任命されてきた.彼らの特権というのは何だったのだろう.
恐らく,「幕府を開ける」というのも特権の一つなのだと思う.他に,征夷大将軍になって何かお得なことはあったのだろうか.

ある夏の日,鎌倉を散策していた源頼朝.喉が渇いて近くにあった茶店に立ち寄る.
「こんにちは,御注文がお決まりでしたらどうぞ」の店員の声を受け,注文する源頼朝.
「グランデのキャラメルマキアートを一つ頂けぬか」
「かしこまりました」
「あ,これを持っているのだが」
と源頼朝が懐から取り出したのは一枚のカード.
「いつもありがとうございます.当店ではこちらのカードで5%引きにさせて頂いております」
源頼朝が出したのは将軍カード.茶店で全商品5%オフだ.

暇潰しにゲームセンターに立ち寄った足利尊氏.店員に声を掛ける.
「このカードを持っているのだが,何か特典はあるかな」
足利尊氏が懐から取り出したのは,将軍カード.
「いつもありがとうございます.このカードでは,こちらの乗り物に1回無料でお乗り頂けます」
店員が足利尊氏に示したのは,コミカルな音楽と共に上下動くパンダのマシン.
「じゃあ,一回頼む」
店員がマシンを操作し,パンダの背中に跨って音楽と共に上下に動く足利尊氏.こぼれる笑顔.ゲームセンターでは,パンダマシンが一回無料だ.

死んだ子犬を抱いて泣きじゃくる子供.
「ペットのペロが死んじゃったよ」
そこへ通りかかったのは坂上田村麻呂.
「坊や,ちょっとペロとやらを見せてみなさい」
坂上田村麻呂は懐から出した将軍カードで死んだ子犬の頭を撫でる.すると生き返って走り回るペロ.
「おじちゃん,ありがとう」
満足そうな顔で子供に微笑む坂上田村麻呂だ.

はとバスで一人で江戸観光をする徳川家康.偶然隣の席に座った町娘が車酔い.心配した家康は声を掛ける.
「もしもし,娘さん.車酔いかね」
「はい,ちょっと気分が」
「これを試してみたらどうかね」
徳川家康が懐から取り出したのは,将軍カード.
「娘さん,これをテープでヘソに貼ると車酔いをしないそうだよ」
将軍カードをヘソに貼ると,車酔いをしない.そんな民間療法だ.

オシャレなフランス料理店で意中の女性と食事をする大伴弟麻呂.食事を終えてギャルソンを呼ぶ.
「ちょっと来てくれ給え」
「はい」
「会計はこれでしてくれ給え」
大伴弟麻呂が女性にも見えるように懐から取り出したのは将軍カード.
「申し訳ございません.当店ではこのカードのお取り扱いをしていないんですよ」
「えっ,いや,私は初代征夷大将軍の……」
「申し訳ございません」
「何とか……」
「申し訳ございません」
泣きながら店を飛び出す大伴弟麻呂.今日はお金を持ってこなかった大伴弟麻呂.征夷大将軍だってお金がない日だってある.将軍カードだって使えない店だってある.

昔は天皇が任命していた征夷大将軍.恐らく,現在は宮内庁あたりに申請書と入会金とを送れば将軍カードが貰えると思う.

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December 25, 2009

煮物

「○○と△△は似ている」という表現を使ってみたい.
例えば,「人生とワインは似ている」のような表現だ.この表現の後に言葉を付け加えて,「人生とワインは似ている.年月を経ることにより良いものは熟成されてゆく」と言えば,「ワインも人生も分かっているんだよ」という両方とも分かっているような雰囲気が醸し出せる気がする.言った自分が偉くなったような気がしてくると思う.
場面を弁えて使うと,一目おかれる存在になれると思う.
どのような場面で使えるだろうか.

ある会社の製品の開発会議.
不景気のあおりを受けて破産寸前.社長を含めた会社役員達も参加し,起死回生の一手の新製品を売り出そうと始めた会議は,揉めに揉めて20時間経過.
出口の見えない会議に社長は一言.
「人生と会議は似ているねえ.いつだって正しい結論があるわけじゃない」
社長の深い言葉に参加者は涙を流し,立ち上がって拍手する.書記が涙で視界を霞ませで議事録をとる.この会議の結論は「人生と会議は似ている」.
社長はこの一言で尊敬され,この会社は破産となることだろう.

クリスマスイブのおしゃれなレストランで,食事をする若いカップル.男は意を決して女性に言う.
「僕はずっと君のサンタクロースになれるかな」
「えっ」と理解できない表情をする女性.
「いや,そうじゃなくて,ソチャンマとサンタクロースは似てるんだ」
ますます混乱する女性.
「ソチャンマとサンタクロースは似てるんだ.両者とも人に幸せを運ぶんだよ.えーと,つまり,君のソチャンマになりたいんだ」
サプライズなプロポーズだ.男をうるんだ瞳で見つめる女性.
ソチャンマとは,アフリカの勇敢なる少数民族ンバホ族の伝説英雄だ.ンバホ族流のプロポーズに,ンバホ族伝統の喜びのダンスを舞いたくなる女性だ.

思春期の中学2年生女子.
寂しい夜は,ひとり窓から星を見ながら呟く.
「ゴミムシとゴミムシダマシは似ている」
彼女の目から涙が流れるのは何故だろう.

結婚を許して貰おうと,彼女の父親に挨拶に行った青年.彼女の家の居間で,テーブルを挟み,厳しい顔つきで正座した父親と向き合う.緊迫した場面だ.
「お嬢さんと結婚させてください」
と父親に頭を下げる青年.
「ところで,君の名前は上岡春人(かみおかはると)というそうだな」
「はい.そうです」
「タピオカとタルトつなげてタピオカタルトっていうと,君の名前にそっくりだと思わないかね」
「確かに似ていますが……」
「そんなふざけた名前の男に,可愛い娘を嫁にやるわけにはいかん」
「えっ」
「不愉快だ.帰ってくれたまえ」
ふすまを開けて部屋を出ていく父親.
「上岡春人」と「タピオカタルト」が似ていることに気がつかせてくれた彼女の父親の偉大さを感じずにはいられない上岡春人だ.

今日はクリスマス.クリスマスかクリスマセンかといわれたらクリスマセンというほかない.

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December 05, 2009

ゲームの達人

少年犯罪などで犯人が動機として挙げる「ゲーム感覚」というのは,どんな感覚だろう.少年だけに許される動機なのだろうか.大人が「ゲーム感覚」で何かをしたり,少年少女が犯罪以外のことを「ゲーム感覚」でしてみたりというのはあっても良いと思うが,どうだろう.

今川義元を桶狭間で破った織田信長.ゲーム感覚で奇襲攻撃をしかけたという.

初代EU大統領に選ばれたヘルマン・ファンロンパイ.ゲーム感覚で選ばれた結果だ.

つれづれなるまゝに,日ぐらし硯に向かひて,心にうつりゆくよしなしごとをゲーム感覚にて書き付くれば,あやしうこそ物狂ほしけれ.
-「徒然草」序段

縄文時代の話.
空腹に耐えかね,ゲーム感覚で海の中に転がっていた気持ちの悪い変な塊を食べてみた.人類が初めてナマコを食べた瞬間である.

ときどき目を塞ぐ瞼は邪魔だと考えていた読者モデルの山下マリー(21歳).特に集中して物を見るときは気になって仕方がない.
「ひょっとして,無くなったらおしゃれじゃないかしら」
おしゃれ革命の革命戦士マリーは,ゲーム感覚で瞼を切り取ってみた.
そして切り取った瞼で折り鶴を折ってみた.これをあげれば友達の病気が良くなる気がした.

ゲーム感覚で鼻の中に緑豆を植えてみた.10日後に鼻の穴からモヤシが生えてきた.収穫して食べたてみたら,おふくろの味がした.

「自分も魚のように水の中で生活できるのではないか」と魚類図鑑を見ながら考えた丸和太郎君(8歳).ゲーム感覚で水の中でエラ呼吸してみた.いつもより楽に呼吸できる気がした.そして,新しい方向へ人類の進化が始まる気がした.

自分の人生を振り返ると,ほとんどすべてこのことがゲーム感覚であったような気がする.

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November 26, 2009

キケンなアイツ

バスや電車などで「危険物の持ち込みはご遠慮ください」という放送が流れることがある.ナイフとか毒ガスが危険物なのは分かる.では,どの様な物までが危険物と判定されるのだろうか.

駅の改札口で止められる青年.
「お客さん,手にもたれているビニール袋の中身は何ですか」
「これは,お土産の焼く前のもんじゃ焼きですけど」」
「それは本当に焼く前のもんじゃ焼きですか」
「はい」
「いやー,疑わしいですねえ.アレでしょ.ねえ」
何故彼がそんな物を持っていたのは謎だが,焼く前もんじゃは危険物だと思われる.

タクシーで運転手から声を掛けられる老人.
「済みません,お客さんの持っているかばんに入っているのは,モチではありませんか」「はい,正月が近いのでモチでもと思いまして」
「今月,年末の安全月間ですので,ご老人とモチの組み合わせはご乗車を遠慮して頂いているんですよ」
年末年始に多数のご老人を葬る食べ物,モチ.老人とモチの組み合わせは危険であることは間違いない.

バスに乗り込もうとする中学二年生女子.それを止める運転手.
「お客さん,済みませんが,バッグの改めさせていただけませんか」
「えっ,何故ですか」
「済みません.安全な運行のためご協力いただけませんか」
「は,はあ」
バックの中を改める運転手.そこで見つけた一冊のノート.
「お客さん,これは危険ですよ.大人になってこのノートを見たら,かなりのダメージです.将来友達に見られてもいけません」
思春期の少年少女が書き綴った自作の詩.間違いなく危険だ.

飛行機の搭乗口で止められる冴えない中年男性.
「お客様,お待ちください.危険物を持ち込まないで頂けますか」
「いや,持っていませんが……」
「お客様,小さな頃から悪ガキで15歳で不良と呼ばれたでしょう」
「いや,まあ,そうかもしれませんけど」
触るもの皆傷つけるギザギザハート.間違いなく危険物だ.今年で49歳の中年男性.いまでも彼のハートのギザギザは研ぎ澄まされている.

盗んだステテコで走り出す75の夜.

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«割れてない尻