« 台風,温帯低気圧へ | Main | ツキノワグマの事情 »

October 15, 2004

秘伝のタレ

秘伝のタレが怖い.
うなぎ屋や焼き鳥屋によくある何十年もの間毎日少しずつ継ぎ足して使っている製法秘伝のあのタレだ.

「今日は老舗のうなぎ屋さんにお邪魔しました.早速ご主人にお話を伺いたいと思います!」
レポーターはマイク片手に,にこやかにカメラに向かって話掛ける.
ここは,生放送の昼番組「直撃!食べたい昼御飯」の収録現場.昼時とあってうなぎ屋の席はお客さんで埋まっている.
「こちらのお店のうなぎのタレは,昔から継ぎ足して使っている秘伝のタレだそうですが,いつ頃からお使いになっているのですか?」
レポーターは,うなぎを焼く主人にマイクを向ける.
「初代からだからもう百二十年になりますねえ.戦争中は先代が『このタレだけは』と壷を持って戦火から逃げ惑ったそうです.」
主人は忙しそうに,うなぎを壷に入ったタレに浸して焼きながら,誇らしげに答えた.

私はこのタレってどうだろうと思う.一体何が入っているのか分からない.そのタレは初代の試行錯誤の汗と涙の結晶かもしれないが,本当に初代の汗と涙が入っているかもしれない.風邪をひいた先々代がくしゃみした拍子に鼻水を飛ばしたかもしれないし,50年前に飛び込んできたセミが壷の底で死んでいるかもしれない.ひょっとしたら,その家のばあさんが毎晩タレで入れ歯を洗っているかも知れない.

「三郎や,昨日外した入れ歯が見つからないんだよ.知らないかい?」
とテレビの収録に気が付かずに店の主人の母親であるばあさんが奥から出てきて,主人に尋ねた.
「知らないよ.今テレビのインタビュー受けてるんだから後にしてくれよ.」
主人は困ったように答え,焼いているうなぎを引っくり返す.
「あらあら,元気なおばあちゃんですね.」
とレポーター.
「本当にそれだけが取り柄で.」
と二人和やかに笑いあう.

ご主人よ,笑っている場合ではない.ばあさんの入れ歯はその壷の中だ.

|

« 台風,温帯低気圧へ | Main | ツキノワグマの事情 »

Comments

もう!どうなってんのさ、頭の中!!
面白すぎでしょ!!!
私もどうかって思います。なんか、汚・・・い・・・

どうせなら、レポーターのいる前でうなぎに絡みついた
入れ歯を見てみたかった・・・

Posted by: コングBA | October 16, 2004 at 09:43 PM

毎度ありがとうございます.
コングBAさんのコメントを糧に頑張っております.

秘伝のタレを見る度に,新しく作り直した方がうまいじゃないのか?って思います.

秘伝のタレもどうかって思いますけど,この記事を「グルメ・クッキング」のカテゴリを付ける自分もどうかって思います.

Posted by: JC若鶏 | October 17, 2004 at 12:44 PM

またまたコメント。
んでもってコメント返しでまた笑い!
カテゴリー、JC若鶏さん用に作ったほうがいいかも知れませんよ。

Posted by: コングBA | October 17, 2004 at 10:21 PM

毎度あり.

実は無理やりカテゴリにねじ込むのが好きだったりします.
でも,無理やりすぎる時はアレなんで作ります.

Posted by: JC若鶏 | October 18, 2004 at 12:12 AM

Post a comment



(Not displayed with comment.)




« 台風,温帯低気圧へ | Main | ツキノワグマの事情 »