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December 17, 2004

現代の知られざる名工 1

セロファンテープ職人 セロ山留助(せろやまとめすけ)

セロファンテープの歴史は古い.何時,何処でセロファンテープが生まれたのか正確な事は分かっていないが,セロファンテープについての最古の記述は日本書紀に見られる.また,セロファンテープは,度々歴史の有名な逸話にも登場する.弁慶がセロファンテープで刀の修理をした事や,千利休が割れた茶碗をセロファンテープで補修した事,幼少の雪舟がセロファンテープを丸め「くっつき虫」と言いながら人の服に付けて悪戯していた話は,ご存知の方も多いことだろう.
今回は鎧や刀の修理のために盛んに作られた戦国時代から続くセロファンテープ蔵の職人,35代目セロ山留助さんを訪ねた.セロ山留助はセロファンテープ作って60年の職人である.

毎朝5時に起きるセロ山さんの一日は,裏の山でセロの木の葉を集めることから始まる.
「セロの葉ってのは,朝早く取らないと使い物にならねえんです.昼取ったセロの葉じゃ,丈夫なテープにならんのですわ.」
セロ山さんにセロの木について訊いたところ,悲しそうにこう答えた.
「昔は何処でもセロの木が生えてたもんだけどねえ,環境破壊だか何だか難しいことは分かねえけど,最近はこの山でしか見かけねえよなあ.」
さらにセロ山さんは,セロの葉を取りながらセロファンテープの名前の由来を教えてくれた.
「最初は,セロの葉でくっ付ける物ってえ事で『セロ葉貼付(セロハチョウフ)』って名前だったんですけどねえ,『貼付』が慣用読みの『テンプ』ってのに変わって,『セロハテンプ』ってえのになって,『セロファンテープ』ってえのになったんでさあ.」
山で集めたセロの葉は二日間日光に当てて乾燥させ,石臼で挽いて粉にし,水に漬けて一昼夜日陰に置く.粉を漬けた水は汁セロと呼ばれている.汁セロを壷に入れて封をし,一年間蔵に寝かせる.この一年の間に,セロの葉に付いていたセロ菌が汁セロを醗酵させ,全体が固まり,氷の塊のようになる.この塊は固いセロ,略して固セロと呼ばれている.
「固セロってのは,充分に醗酵してなかったり,醗酵し過ぎたりするてえと,透明なセロファンテープにならないんでさあ.」
セロ山さんは固セロを愛しそうに撫でながら,こう教えてくれた.
固セロを湯煎すると溶けて,粘性のある液体になる.この液体は再汁セロと呼ばれ,冷めると再び固くなる.完全に固まる前の耳たぶの固さになったところで,棒を使って普段私達が使っているセロファンテープの厚さになるまで薄く延ばす.
セロ山さんは,手早く延ばしながらこう語った.
「セロ煮3年,延ばし10年っていうくらい延ばしってのは,骨がおれまさあ.手早く延ばさないと,また固まっちまいますから.」
セロ山さんは延ばし終えた後,休みながら話した.
「この延ばす棒は,『セロ棒』っていいましてねえ,セロの木で作った棒でさあ.他の木から作った棒じゃあ,こうは延ばせねえ.やっぱりセロで作った物同士,相性がいいんですかねえ.」
延ばしたセロを折りたたみ,セロ切り包丁で等間隔に切る.これを冷水と細かい砂で磨き,滑らかにするとお馴染みのセロファンテープのテープが出来上がる.このテープの片側にセロの木の樹液を煮詰めて作った糊を塗り,芯に巻きつけるとセロファンテープとなる.セロファンテープの芯は今でこそ紙で出来ているが,昔はセロの木で出来ていたそうだ.
「やっぱり最後ってえのは,気を使うねえ.これで全部が台無しになっちまうことだってあるんだ.」
そして,今回話を伺った最後にセロ山さんは,寂しそうにこう呟いた.
「あっしの後を継いでくれる者がいねぇ事が,悲しいねえ.手作りセロファンテープってのが廃れるのも,時代の流れなのかねぇ.寂しいもんでさあ.でも,やっぱし留めるなら手作りセロファンテープだと思うねぇ.機械で作ったセロファンテープじゃ,物は留められても人の心までは止められねえよなあ,って古い人間のあっしは思いまさあ.」

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Comments

これからは子供にも
セロファンテープの無駄使いさせないよう
注意いたします。

セロファンテープひとつで
ここまで遊べるJC若鶏さん尊敬です。

Posted by: クレオ | December 18, 2004 at 12:06 PM

恐らく,セロ山作のセロファンテープはほとんど市場に流通しない奴なので,あまり気にせずにお使いください.
人の心を留める必要がある時には,是非セロ山作セロファンテープをお探しください.

Posted by: JC若鶏 | December 19, 2004 at 10:22 PM

またまたまたうまい事言っちゃって~~~!!
久々に来たらこんなに名作の数々が。
ここんとこ、忙しいのとギックリ背中をやらかして皆さんのブログに遊びに行けなかったんです、って私が直接お伺いするわけじゃないんですがね。
そんなに深いんですね、セロファンテープの歴史。
素晴らしかったです。日本書紀のころまでなんて・・・感動した!

Posted by: コングBA | December 20, 2004 at 01:27 PM

コングBAさん
そこはか日記の方で読みましたが,お大事に.
セロファンテープの歴史は結構長くて,縄文土器にも修復に使っていたと専らの評判です.

Posted by: JC若鶏 | December 21, 2004 at 12:53 AM

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