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January 31, 2005

バール的な物

今さら何をという感じもあるし,言い尽くされた感じもあるが,問題は「バールのような物」だ.バールのような物は結局何なのだろう.バールといってはいけないのか.
犯行に使われた道具がバールであると確定しているわけでもないのに,ニュースで「金庫がバールでこじ開けられた」と放送したとしよう.実際は,「高枝切りバサミ」でも,「マジックハンド」でも,「でかい耳掻き」であったとしても,恐らく,視聴者は誰も文句を言うまい.

逆に「バールのような物」と伝えてはあらぬ誤解の元となる.例えば,こんな事件を考えてみよう.

住所不定無職の男が,事務所に侵入し,女子従業員を人質に取り金庫を奪って逃走した.
男は事務所のシャッターをバールのような物でこじ開けて進入したとみられている.男は,持っていた拳銃で従業員を「動くな.金はどこにある.死にたくなければ答えろ」と脅して金庫の在り処を聞き出して金庫を奪い.女性従業員を人質に取って逃走した.
事件後の男の目撃情報はあるが,どれも不確かな情報であり,確かな足取りは掴めていない.この事件は昨日時効を迎えたが,未だにこの男の行方は分からず,人質にされた女性従業員も見つかっていない.

「バールのような物」を使って一部をぼやかす事が許されるのなら,全体的に少しばかりぼやかしても差し支えはなかろう.この例をちょっとぼやかしてみよう.

風来の紳士のような人がステッキの様な物でドアをノックなどするして,鍵の掛かった扉のような物を開き,城のような建物に侵入した.
城に巣食う者のような人達を,呪文のようなものを唱えて動けないようにし,隠された宝箱のような物のありかを聞き出した.宝箱のような物を手にした紳士のような人は,城に捕まっているお姫様のような人を見つけ,一緒に連れて出て行ったようなことをした.その後の風来の紳士のような人の消息は分かっていない.噂では,今もどこかで,いつまでも幸せに暮らすなどしているという.

「ような」のせいで,長閑な昔話のような話になってしまった.「バールのような物」が諸悪の根源だ.一方,こちらの話は「バールのような物」に置き換わってしまっただけなのにえらいことになってしまっている.

無職の孫が,バールの様な物で祖父を襲って殺害のようなことをし,金を取って逃走した.
無職の孫は,祖父に向かって何度もバールのような物を打ちつけた.祖父が懐の財布から取り出した金を取り上げ,さらに意識を失うまでバールのような物で殴打し,死亡.現場は,母親に目撃されたが,そのまま逃走した.
取った金は遊行費に充てたという.

大惨事になっているが,「バールのような物」を初めとしした「ような」を修正すると,実際はこんな話だ.

小学生の太郎君は,おじいちゃんの肩を肩叩きで一生懸命叩いていました.
「おー気持ちいいわい.極楽極楽.天国のようじゃわい.おお,そうじゃ.これでおもちゃでも買いなさい.」
とおじいちゃんは懐から財布を取り出すと,千円を太郎君に渡した.
「わーい,ありがとうおじいちゃん.じゃあ,もうちょっと叩くね.」
と肩を叩くうち,おじいちゃんは気持ちよくなって寝てしまいました.本当に極楽にいるような安らかな寝顔でした.太郎君は起こさないようにそっと部屋を出ました,それを見ていたお母さんは,
「折角おじいちゃんに貰ったんだから,大切に使いなさいよ.」
と言いました.太郎君はお母さんに内緒で家を抜け出し,お菓子屋さんに行って,少しだけチョコレートを買って食べました.

「肩叩き」を「バールのような物」に置き換えたせいで,心温まる話が,孫が祖父を撲殺して金を強奪する殺伐とした話になってしまった.太郎君はバールのような物でいらぬ心に傷を負ってしまった.

「バールのような物」はシャッターや金庫だけでなく,話の内容や太郎君の心まで破壊する.

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Comments

そういえば、「バール」そのものを
見たことがありません。。。
知っている気でいたのに
実はイメージしかないことに
たった今気付いた私です。

Posted by: クレオ | January 31, 2005 at 10:46 PM

あっ、私もだ!!
クレオさんに同じ。

Posted by: ちろりん | February 01, 2005 at 01:21 PM

えっ,結構「バールのような物」の言い回しって知られているものかと思っておりました…….
バールはホームセンターに売ってます.まあ,でかい釘抜きです.1mくらいの長さのやつとかもあります.

Posted by: JC若鶏 | February 02, 2005 at 09:50 PM

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