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June 26, 2007

しゃくれんぼう将軍

暫く前に知ったことだが,「聖徳太子」には謎が多く,彼の偉業のほとんどが歴史的に確証はないらしい.現在の教科書では「聖徳太子」という表記ではなく「厩戸王」と表記され,聖徳太子は存在しなかったという説まであるとのこと.歴史の授業で当然のように聖徳太子のことを教えられ,聖徳太子の肖像画が描かれたお札を使っていた世代の自分には少し驚きであった.
後の時代になって付け加えられた聖徳太子の偉業.本当かどうか疑わしいのは,少し残念だ.

ある日,聖徳太子が散歩をしていると,路地で細々とスルメを売っていた老人を見かけた.
「ご老人,そんなところでスルメを売っていて儲かるのかね」
「これは,太子さん.私なんぞ下賎な民に声を掛けてくださるなんて」
「いやいや,気にするでない.ところで,商売の方はどうだね」
「いや,さっぱりです.誰も買ってくれやしない.このままでは,今日は食事にありつけそうにありません.しかし,スルメを売ることしかできない私にはどうすることもできません」
「うむ,ご老人,それではこうしてみたらどうかね」
聖徳太子が老人に授けた知恵は,「漁師と直接契約して仕入れることによる中間マージンのカット」,「大量に買い付けによる原材料費のダウン」,「流通路の確保による販売地域の拡大」,「情報網の整備による在庫の削減」,「品質の徹底管理」.全国いつでもどこでも安全でおいしいスルメが簡単に手に入る,民衆のそんな夢を聖徳太子の知恵により老人が叶える.
この老人の名前はナトリ.後に珍味の製造・販売会社を興すことになる.

「ああ,こんなに暑いと食欲でないよ」
夏のある暑い日に聖徳太子は一人で文句を言ってみる.
「そうだ,面白いことを思いついたぞ」
台所へ駆け込む聖徳太子.茹でた後氷水で冷やしたラーメンに,細切りにしたキュウリとハム,錦糸玉子を盛り付け,醤油と酢でさっぱりと味付けし,すりゴマと刻んだ海苔を散らして,カラシを添える.聖徳太子が思いつきで作った麺料理こそ,冷やし中華.この時こそ冷やし中華が生まれた瞬間だ.
「これはうまい.食欲の出ない夏にピッタリだよ」
ズルズルと夢中で頬張る聖徳太子.
「この料理を中国の人に教えてやろう」
その年,聖徳太子は遣隋使を派遣することになる.

思春期を迎えた聖徳太子.
「本当の自分はどこにいるのだろう」
自分探しの旅に出た聖徳太子.世界で初めて自分探しの旅に出た人物こそ聖徳太子だ.
本当の自分を探しのために遣隋使を派遣,冠位十二階を定め,十七条の憲法を制定.それでも本当の自分を見つけられない聖徳太子であったが,偶然立ち寄った法隆寺で本当の自分を発見.法隆寺の中で小動物のように小刻み震える本当の自分.
「おお,なんと小さな自分であろうか.なんと傷つきやすい自分であろうか」
「きゅるるるるーん」と鳴きながら,本当の自分が聖徳太子を見上げる.「毛布をかけて下さい,そして抱き上げてください.牛乳を飲ませて下さい」と潤んだ瞳で訴えかける.
「辛かっただろう.長い間待っただろう.見当外れのところを探してごめんな」
発見した自分に毛布をかけて抱き上げ,牛乳を与える聖徳太子.
「もう,失くさないよ.本当の自分」
聖徳太子の頬を涙が伝い,小動物の震えが止まる.世界で初めて本当の自分を探し当てたのも聖徳太子だ.

謎めいた男,聖徳太子.事実云々よりも,聖徳太子の心意気を大切にしてあげたい.

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June 19, 2007

俺とお前とビッグマン

ビックリマンチョコが分からない.いや,ビックリマンチョコというのは.シールのおまけがついたウエハースチョコのお菓子であることくらいは分かっている.分からないのは,ビックリマンチョコのビックリの部分だ.誰が,誰を,何の目的で,どうやってビックリさせるのかが分からない.子供の頃,ビックリマンチョコを食べ,シールを集めたりもしたが,何一つビックリしなかったことを覚えている.何かビックリマンの楽しみ方,食べ方を間違えていたのだろうか.

「はい,おじいちゃん,お誕生日おめでとう」
孫からおじいちゃんへの誕生日プレゼント.プレゼントの包みを開けたらビックリマンチョコ.孫からのプレゼントにビックリのおじいちゃん.チョコがウエハースに挟まれていてビックリ.さらにお菓子の下からシールが出てきてビックリ.そして,孫からのプレゼントを貰える自分の存在にビックリ.嬉しさのあまり気を失ってビックリ.気を失っている間に三途の川が見えてビックリ.三途の川の向こうに死んだ妻が見えてビックリ.
冥土の土産にビックリマンだ.

半ズボンの裾から顔を覗かせるビックリマン.それを見た婦女子の人は,ビックリして「キャー」と言って顔を赤らめる.ビックリマン,ビッグマンと少し似ている.むしろ,この場合は,ビッグブラザーといってもいいかもしれない.しかも本体はウェハースに包まれているのだ.
紛らわしく書いたが,ビックリマンとはシールのおまけがついたウエハースチョコのお菓子.何と紛らわしいのかは知らない.いや,何も紛らわしいところなどない.

ビックリすることで有名なインド人にビックリマンチョコを食べさせてみる.
「ウエハースノアイダニ カレーガ ハサマッテイルカト オモッタヨ.ビックリシタヨ」

キンダーサプライズやビックリマンチョコでビックリするような大人になりたい.

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June 16, 2007

親父のパラペット

息子を初めて殴った日,ヒサヒロは初めてパラペットを吹いた.
普段はどんなに辛いことがあってもパラペットを吹かないヒサヒロであったが,この日
だけはパラペットを吹かずにはいられなかった.

ヒサヒロがパラペットのあるこの家を買ったのは,今から10年前.子供達もできたし,このまま狭い賃貸のマンションで家賃を払い続けるのも勿体無いということで,マイホームを買うことに決めたのだった.
ヒサヒロが,住宅情報誌のページを何気なくめくっているときに,偶然見つけたこの家は,一点の疑問を除いて,立地条件,広さ,間取り,価格,全てに申し分のない家であった.その一点こそ『パラペット』と書かれた部屋.ヒサヒロはパラペットが何であるか解明すべく,そしてパラペット次第では売買契約を結ぼうと不動産屋を訪ねた.
「すみません,パラペットというのは何ですか」
「何といいますか.家族の絆とでもいいますか」
「絆……ですか」
「ただの笛だと言う人もいますが,私たちは家族の絆だと理解しております」
「笛なのですか」
「パラペットをただの笛と見れば,ただの笛です.それも巨大な笛です.パラペットが不満ですか」
「いや,できれば取っていただけると……」
「すみません.それはできないですね.この家の構造上,この笛を取ってしまいますと,家が崩れてしまいます.この家にとってパラペットは必要不可欠な物です.むしろパラペットに家が付いているといいましょうか.物として考えるとこの家にとってパラペットは必要ですが.家族にとってパラペットが必要なのかは分かりません.しかし,家族がこの家を必要とするのならば,その家族はパラペットが必要ということです.パラペットの使い方は,家族それぞれの使い方があってもいいと思います.いかがですか」
「うーん」
不動産屋の言葉に納得いかない点はあるものの,ヒサヒロは現地で実際にパラペットを見て売買契約を結ぶことにした.何故かはその時のヒサヒロには分からなかったが,いつか必要になるという予感がしたからだ.

間取り図にパラペットと書かれた部屋は,真ん中に床から長い管が生えている2畳ほどの窓がない部屋.床はでこぼこしているために荷物を収納として使うことができないし,楕円形の形をしているため箪笥を置いてもしっくり来ない.
引っ越して暫くは,面白がって子供達がパラペットを吹いて遊んだが,パラペットは,その言葉の持つ愉快な言葉の響きに反して,涙を誘う哀しげな音を出す.加えて,家全体が共鳴して音を出す仕組みであるため,家中に大きな音を響かせる.不動産屋の言った通り,この家は,家というよりパラペットという笛のようだ.家に笛が付いているのではなく,笛に家がついているようなもので,家が一つの笛だ.ヒサヒロ一家は,パラペットの使い方を考えたが,結論としては,何にも使えないただの空間ということになった.

そして,パラペットが何にも使われなくなり,誰にも吹かれなくなって9年が経った.そして,息子を初めて殴った日,ヒサヒロは初めてパラペットを吹いた.
哀しげな音の中に,自分の行いに後悔はしていないというヒサヒロの決意が家全体に響く.
息子は涙を滲ませ「ごめん,親父」と呟き,妻ヒサコは,父が息子を思う心に触れて目頭が熱くなる.家族の心にパラペットが染み渡った.

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June 14, 2007

簡単パラペット

住宅情報誌や売り家の広告などで,家の間取り図などに「パラペット」と書かれていることがある.パラペット,愉快な響きの言葉だが,意味が想像できない.何のための部屋だろう.特に「パラペット」の説明が書かれていないので一般的な言葉なのだろうか.知らないのは自分だけなのか.日常会話でパラペットという言葉が出てきても,「ああ,パラペットね」と分かってくれるのか.
恐らく,自分だけ知らないパラペット.結局何なのか.

今年で58歳になる父.父は寂しくなると,一人パラペットを吹くことにしている.パラペットとは物悲しい音色笛の一種.家の中で一部屋を占める大笛だ.反抗期の娘から辛い言葉を投げかけられたとき,妻から給料の額について厳しいことを言われたとき,会社で部長から早期退職の話を持ちかけられたとき,一人部屋に篭り笛を吹く.
「ポヒー,ホヘー」と涙を誘う音が今日も家に響く.
父の枕は乾かない.

世のお爺ちゃんが,お婆ちゃんに反逆の狼煙をあげる.
「知恵袋,知恵袋」ともてはやされるお婆ちゃん.一方でお爺ちゃんは何もなし.我々,お爺ちゃんも何か袋を持つべきではないのか.そんなお爺ちゃんが考案したのがパラペット袋だ.パラペット袋,当然中にはパラペットが入っている.お爺ちゃんの最終兵器パラペットだ.お爺ちゃんは,袋から取り出したパラペットでお婆ちゃんの知恵袋を切り裂く.
おじいちゃん挙兵の時.

「おとっつぁん,お粥ができたよ」
「こんな体なばっかりになっちまったばっかりに,お前には苦労をかけるねえ
「何を言ってんの,おとっつぁん」
「すまないねえ,せめてこの家にパラペットがあれば」
「おとっつぁん,そんな贅沢言いっこなしだよ」
貧しい生活を送る父と娘の心にある富の象徴パラペット.孝行娘と病弱な父の夢の生活パラペットだ.

思春期のタモツ君が通信販売で買ったのは,パラペットブートキャンプだ.パラペット・ブランクスが考案したアメリカ発のエクササイズ.それが全米で人気No.1のパラペットブートキャンプだ.斬新な動きでニュルニュルと手足を動かし,ゴムバンドでパチンとやって体を鍛える.
タモツ君は逞しくなった自分を想像して毎晩パラペットブートキャンプ.クラスの女子達から絶賛を浴びる自分を想像して手足をニュルニュル,下駄箱にラブレターが入っていることを想像してゴムバンドをパチン.ニュルニュル,パチン.ニュルニュル,パチン.
タモツ君の夢が広がる.

天竺にたどり着いた三蔵法師一行.ついにお釈迦様から経典が貰える時がやって来た.普段は冷静な三蔵法師も今日は何だか興奮気味.
しかし,そこにあったのはお釈迦様の書置き.
「暫く休暇でパラペットに暫く出かけています.御用の方はパラペットまでお願いします」
お釈迦様はパラペット中.がっかりする一行.三蔵法師に投げかけられる落胆の声.
「あーあ,気分が盛り下がっちゃったよ」
「あんたに着いて来るんじゃなかったよ」
「もう疲れて動けないよ」
三蔵法師は,静かに孫悟空の頭の輪を締め上げる.

部屋とワイシャツとパラペット.愛する貴方のため,毎日磨いていたい.

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June 05, 2007

セクション

言葉の頭に「セクシー」と付けると何だかどうでもよくなるから不思議だ.

・セクシーG8主要国首脳会議
・セクシー社会保険庁
・セクシー総選挙
・セクシー温暖化
・セクシーポンキッキ

イタリア,ブラジル,ロシア,トルコ,ベネズエラなどの国が参加するG8.セクシー年金をチラリと見せたり,見せなかったりする社会保険庁.何故か投票するのにドキドキするセクシー総選挙.
そして何を開くのか分からない,開け!セクシーポンキッキ.

とりあえず目の前にある始末書をセクシー始末書にして提出したい.

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