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May 20, 2008

磁場野菜

暫く仕事でヨーロッパなんぞに行っていたため更新が止まっておりました.
それはともかく,家の近所のスーパーマーケットには「地場野菜」なるコーナーがあり,近所の農家で作られた野菜が,作った人の名前入りで売られている.例えば,「北村一のホウレンソウ」のような感じだ.
やはり,野菜売り場で何を買おうか悩む主婦は,購入する際に作った人にこだわるのだろうか.
「山田久蔵さんのホウレンソウは高いけど質はいいのよねえ.北村一さんのは安いけどちょっと臭いのよねえ.どっちにしようかしら.そうだ.今日は給料日だから奮発して久蔵にしましょう」
そして,浮き浮きとホウレンソウを買った帰りに,主婦は夫に電話をするのだ.
「あなた,今日は久蔵よ」
「おおっ,奮発したなあ,今日は久蔵か」
とスキップしながら夫は家に帰るのだ.
そんな主婦達の味方,地場野菜.それなりに苦労とかあるのだと思う.

日本にやってきたロバートさん.農家の一人娘と結婚して農家を継ぐことに.故郷を思い出し,額の汗をぬぐいながら作ったトウモロコシ.
「ワタシノ トウモロコシ.ニホンノ ミナサンノ クチニ アウダロウカ」
ロバートさんはたくさん採れたトウモロコシを両手に抱え,太陽を見上げて微笑む.
一方,スーパーの地場野菜コーナー.
「ロバートさんのトウモロコシ」を前に集まる主婦.
「ロバートさん,ってこれアメリカ産じゃない」,「このスーパーの表示って信用できるのかしら」
「ロバートさんのトウモロコシ」が生む疑惑.ロバート汗は無駄に流れる.

あるスーパーの地場野菜売り場.このスーパーで好評なのが「富岡トメの草」.90歳を迎えて益々元気な富岡トメさんが厳選して引っこ抜いてきた雑草だ.
「なんか,青臭いけど体に良さそう」,「完全無農薬だから健康にいいよね」,「我侭な子供の教育にいいんじゃないかなあ」と主婦達に大人気.
富岡さんは人気の秘訣をこう語る.
「あたしは戦時中の食糧難を雑草で乗り切った.野菜なんて所詮,草じゃ.サラダなんて草の盛り合わせじゃ.腹が膨れりゃそれでええ」
富岡トメさんの言葉に目頭が熱くなる.

スーパーの果物売り場に置かれた瑞々しい桃.
「有閑マダムの団地桃」
辺りの様子を伺いながら,中学生は震える手を伸ばす.

野菜売り場に開くネオンの花.
そんなネオン光を避けるように置かれた地場野菜「圭子の夢」.
暗いところで育てられた地場野菜.昨日はマー坊,今日トミー.明日はジョージか,ケン坊か.
圭子の夢は夜開く.

中国産野菜が敬遠される昨今.名前が紛らわしいというだけで,地場野菜コーナーの片隅で売れ残る「李さんのチンゲン菜」の気持ち.

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May 03, 2008

奴覇死

生八ツ橋って何から作られているのだろうと思うことがある.少し甘みがあって,もちもちしていて,へろへろした厚みのあるシート状の食べ物,生八ツ橋.何だろう思いながらもおいしく食べている.でも結局何から出来ているのだろう.

夏になると京都で最盛期を迎えるのは,ハナミノカサゴ漁だ.この時期になると京都沿岸にハナミノカサゴが群れとなって押し寄せる.
獲れたてのハナミノカサゴを新鮮なうちに刺身にし,八ツ橋粉をまぶして一昼夜陰干しにすれば,生八ツ橋のできあがり.室町時代から続く伝統製法で作られる八ツ橋.京都府民の知恵の結晶だ.

「最近は,原油価格が上がって大変だよ」
そう語るのは,生八ツ橋作り60年の職人,真田繁茂さん(78歳).
「私らの八ツ橋作りは,室町時代から続いているんだけど,これから続けられるかわかんないよ」
生八ツ橋は原油から作られる.原油から抽出した乳白色したコールタールのようなものを型に入れ,固めたら生八ツ橋ができる.生八ツ橋は,その成分の98%が原油である.
「50年前までは京都でも原油が湧いていたんだけどねえ.地球温暖化とか,環境破壊ってやつで原油が湧かなくなったよ.いつでも犠牲になるのは,庶民なんだよねえ」
真田繁茂は寂しそうに語った.

奈良の大仏として知られる仏像「盧舎那仏(るしゃなぶつ)」.その仏像のうなじにあたる部分に小さな穴があり,甘い蜜が出てくる.その甘い蜜は「盧舎那汁」と呼ばれている.この蜜を寒天で固めたものが生八ツ橋だ.
盧舎那汁は京都府民のみが知る秘密の汁だ.奈良県民に見つからないようにこっそり京都に持ち帰り,生八ツ橋を作る京都府民.奈良には内緒の京都銘菓.蜜が出ることすら知らない奈良県民を笑う京都府民.
昔,この蜜が奈良県民に見つかりそうになり,応仁の乱的なものが起こったという話だ.

レジャーのお供に,メガネ拭き代わりに,産湯として,あらゆる場面で京都府民に使われるのが生八ツ橋だ.

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