磁場野菜
暫く仕事でヨーロッパなんぞに行っていたため更新が止まっておりました.
それはともかく,家の近所のスーパーマーケットには「地場野菜」なるコーナーがあり,近所の農家で作られた野菜が,作った人の名前入りで売られている.例えば,「北村一のホウレンソウ」のような感じだ.
やはり,野菜売り場で何を買おうか悩む主婦は,購入する際に作った人にこだわるのだろうか.
「山田久蔵さんのホウレンソウは高いけど質はいいのよねえ.北村一さんのは安いけどちょっと臭いのよねえ.どっちにしようかしら.そうだ.今日は給料日だから奮発して久蔵にしましょう」
そして,浮き浮きとホウレンソウを買った帰りに,主婦は夫に電話をするのだ.
「あなた,今日は久蔵よ」
「おおっ,奮発したなあ,今日は久蔵か」
とスキップしながら夫は家に帰るのだ.
そんな主婦達の味方,地場野菜.それなりに苦労とかあるのだと思う.
日本にやってきたロバートさん.農家の一人娘と結婚して農家を継ぐことに.故郷を思い出し,額の汗をぬぐいながら作ったトウモロコシ.
「ワタシノ トウモロコシ.ニホンノ ミナサンノ クチニ アウダロウカ」
ロバートさんはたくさん採れたトウモロコシを両手に抱え,太陽を見上げて微笑む.
一方,スーパーの地場野菜コーナー.
「ロバートさんのトウモロコシ」を前に集まる主婦.
「ロバートさん,ってこれアメリカ産じゃない」,「このスーパーの表示って信用できるのかしら」
「ロバートさんのトウモロコシ」が生む疑惑.ロバート汗は無駄に流れる.
あるスーパーの地場野菜売り場.このスーパーで好評なのが「富岡トメの草」.90歳を迎えて益々元気な富岡トメさんが厳選して引っこ抜いてきた雑草だ.
「なんか,青臭いけど体に良さそう」,「完全無農薬だから健康にいいよね」,「我侭な子供の教育にいいんじゃないかなあ」と主婦達に大人気.
富岡さんは人気の秘訣をこう語る.
「あたしは戦時中の食糧難を雑草で乗り切った.野菜なんて所詮,草じゃ.サラダなんて草の盛り合わせじゃ.腹が膨れりゃそれでええ」
富岡トメさんの言葉に目頭が熱くなる.
スーパーの果物売り場に置かれた瑞々しい桃.
「有閑マダムの団地桃」
辺りの様子を伺いながら,中学生は震える手を伸ばす.
野菜売り場に開くネオンの花.
そんなネオン光を避けるように置かれた地場野菜「圭子の夢」.
暗いところで育てられた地場野菜.昨日はマー坊,今日トミー.明日はジョージか,ケン坊か.
圭子の夢は夜開く.
中国産野菜が敬遠される昨今.名前が紛らわしいというだけで,地場野菜コーナーの片隅で売れ残る「李さんのチンゲン菜」の気持ち.

Comments
笑いのセンスがすごく好きです。これからも頑張っておもしろくしてください。
Posted by: 14才 | June 02, 2008 at 01:04 AM
ありがとうございます.
何とかがんばろうって半泣きで書き続けたいと思います.
Posted by: JC若鶏 | June 03, 2008 at 12:27 AM