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July 24, 2008

人違い

「帰ってきたウルトラマン」が可哀想だ.
以前地球にやってきたウルトラマンとは別人であり,初めて地球に来たにもかかわらず「帰ってきた」扱いだ.
「別人なのに……」と複雑な気持ちを抱えて戦うウルトラマン.怪獣を叩く手にも力が入り過ぎてしまうだろう.怪獣からも必要以上に血とか出てしまうことだろう.
とはいえ,人間は知らず知らずの内に人を「帰ってきた」扱いしてしまうこともあるだろう.

妻に別な男と一緒に逃げられたしまった北村ハジメ(37歳).そんなハジメが息子のケンジ君(7歳)に恥ずかしそうに話す.
「ケンジ,お母さんがいなくなって3年経つけど,寂しくないか」
「寂しくないよ.でもお母さんがいてくれた方がいいかなあ」
「実は,新しいお母さんに来てもらおうと思っているんだけど,……」
「ええっ,本当.僕にお母さんが」
「ケンジ,喜んでくれるのか」
「うん,お母さんが帰ってくるんだね」
「いや,帰ってくるわけじゃないけど,……」
「やったあ,『帰ってきたお母さん』だね」
帰ってきたわけではないけど,「帰ってきたお母さん」.ケンジ君の前にcoming soon.

「くだらないけど物は試しだ」と思って入った秋葉原のメイドカフェ.従業員のメイドが御挨拶.
「お帰りなさいませ御主人様」
その挨拶に涙を流す.「お帰りなさいませ御主人様」ここに現る.

すれ違った男に見覚えのある顔.
「あれっ,ひょっとして,タカシじゃないか」
高校生のときの友人に街でばったり再会.30年ぶりだ.
「ああっ,久しぶりシゲヨシ.それにしても,俺だってよく気が付いたなあ」
タカシの前に現れた男.「久しぶりシゲヨシ」だ.

「この街から私の夢が始まるのね」
アイドルになることを夢見て,若者の街渋谷にやって来た田中ようこ.
彼女こそ後のアイドル天使,「ようこそようこ」その人なのであった.

髪型を変えてイメージチェンジ.夏休み中に長かった髪を思い切ってバッサリと切ってしまった若林コズエ.そんなコズエの夏休み明けの一日目.
「あー,頭切ったんだコズエ」
「うん,ちょっとイメージを変えようと思って切っちゃった」
「古典的なのに引っかかっらないでよ.切ったのは頭じゃなくて,髪の毛でしょ」
夏休み明けの教室に現れた女,「頭切ったコズエ」,イメージチェンジ成功だ.

自分でも何が書きたいのか分からない.

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July 21, 2008

縦縞が横縞に

プロ野球で,どこかのチームに優勝の可能性が出てくると,「マジックが点灯した」などと言われる.野球に疎い私にはこれが何だか分からない.マジックとは具体的に何なのか,それが点灯すると何がいいのか,大豆が醗酵すると何故味噌になるのか,あのときの友情は嘘だったのか.さらに分からないのは,点灯したマジックが消えてしまうこともあるということだ.何のための点灯だったのか,消えてしまうようなマジックなら初めから点けなくてもいいのではないか.
ともかく,マジックって何だろう.

「今日は転校生を紹介する.丸和太郎君だ.丸和君は……」
その時,クラス一かわいいと評判の若林こずえの視線と丸和太郎の視線が重なり合い,若林こずえの胸が高鳴る.
「ヤバイ,マジックが点灯した」
思わず声に出した若林こずえにクラスメイトの視線が集まる.
それから10年後,このとき点灯したマジックで,若林こずえが初の女性メジャーリーガーとなり,ワールドシリーズを制することになる.一方,丸和太郎は,初めて若林こずえと会った日から特に何の関係もなく,死ぬまで生き続けたという

お盆になると遠野では,先祖の霊を迎えるために,それぞれの家でマジック点灯が行われる.遠野の伝統行事として,現在でも受け継がれている.
玄関先でその家の者達が手を合わせてマジックを点灯させる.言い伝えでは,死んだお祖父ちゃんやお祖母ちゃん,先祖の霊がリリーフカーに乗ってやってくる.
「あっ,お祖父ちゃんが,今,見えたよ」
空を見上げてそう言う幼い子供の声に,涙を浮かべるその両親.
「お祖父ちゃんは太郎に会うために戻ってきたんだよ」
太郎の円らな瞳に写るのは,リリーフカーに乗ったお祖父ちゃん.その手で振られるヤンキースの野球帽.

雪がちらつく大晦日の寒空の下,マッチを売る一人の少女.
「マッチはいかがですか.マッチは要りませんか」
足早に通り過ぎる人々は少女に気を留めることはない.身を切り裂くような寒さに耐えかねた少女は,少しでも暖を取ろうとマッチを擦る.すると,少女にマジックが点灯.点灯したマジックは,マッチの炎が消えると共に消滅.少女は慌てて,一本,また一本とマッチを擦り,マジックを点灯させ続ける.やがて,マッチの炎の中に生前とても可愛がってくれた祖母が現れ,少女にヒーローインタビュー.少女は誇りに満ちた顔でそれに答える.
翌日の朝,雪に埋もれて倒れた少女の姿が発見される.その姿は間違いなくセ・リーグの覇者であったという.

「やっぱり,最高の人生ってのは,マジックが点灯している人生なんだよ」と知った風な口をききたい.

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July 10, 2008

鼻工場 '87

古代エジプトでは,脳は鼻水を作り出すためだけの器官だと考えられていたらしい.素晴らしい考えだと思う.頭の中の大きな部分を占める脳.それが考えるための器官ではなく,巨大な鼻水工場扱い.何だか分からないが,ロマンチックが止まらない.
脳の役割として考えられていたのは鼻水工場だけではないはずだ.他にもいろいろな別な役割をもつ器官として考えられていたはずだ.

東京の下町に密かにうどん通に愛されるうどん屋がある.この店でうどんを食べた客達は決まって「このうどん,なんだか懐かしい味がしますね」と言う.
店主は味の秘密をこう語る.
「うちの店は,昔から伝わるうどんの製法に忠実に従って作っています.それがお客さんに懐かしさを感じさせるんじゃないでしょうか」
店主はそう言いながら笑って,右の鼻の穴から小麦粉を吸い込み,左の鼻の穴から水を吸い込む.これこそがうどん本来の作り方だと言われている.
鼻の穴から吸い込まれた水と小麦粉が,脳といううどん工場でかき混ぜられ,熟成され,切られてうどんとなる.つむじを軽く叩くと完成したうどんが両方の鼻の穴から噴き出す.
最近では伝統の製法を守るうどん職人の数は減ったといわれている.本場四国でも伝統のうどんを出す店は数軒しかない.
古来よりうどん工場と考えられていた脳は,現在有効に活用されていない.

うなぎの産地偽装が問題になっている昨今.うなぎ養殖職人はこう語る.
「やっぱり,むかしからの養殖法が嘘が無くていいよ」
そう語るうなぎ養殖職人の鼻の穴からはうなぎが顔を覗かせている.むかしからうなぎの養殖器官として考えられてきた脳.現在,その役割は知られていない.
「こうやって,ご飯粒を鼻の穴の下にご飯粒を付けておくと,うなぎが食べるんだよ」
にこやかに話すうなぎ養殖職人の脳でうなぎは健やかに育っているようだ.

小さなポーチを持たずにトイレに行く女子.そんな女子のポーチは脳にあり.
トイレの洗面台の前に立ち,男子に秘密の女子道具を鼻から出し入れ.そして,女の子同士でのおしゃべり天国.話題だって豊富だ.プリプラおしゃれスタイル,ほめられひと夏ワンピ,レディカワvsカッコカワ,冷蔵庫の味噌の醗酵具合,塩のしょっぱさ,素麺の細さ,尿の切れの悪さ.
オシャレな女の子は忙しいのだ

雨ニモマケズ 風ニモマケズ 鼻カラウドンヲダシ 脳デウナギヲカッテ,ポーチヲ頭ニシノバセル サウイフモノニ ワタシハナリタイ

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July 03, 2008

回転さん

洞爺湖サミットに伴う警戒のためか,東京都内の駅などで何人も警官の姿を見かける.素人目には怪しくなさそうに見える人にも職務質問をしている姿もよく見る.素人には分からない警官のチェックするポイントがあるのだと思う.

・不審な動きはしていないか
・ジャケットの色は季節を先取っていないか
・寒さに震えていないか
・ちゃんと野菜を摂っているか
・田舎の母さんは元気か
・ミネラルを摂取しているか
・毛布にくるまれたがっていないか
・小動物に好かれ過ぎていないか
・地球に優しすぎないか
・優しさで逆に人を傷つけていないか
・本人も気付かないうちにオシャレ泥棒になっていなか
・右の穴から出た鼻水は左の穴に吸い込まれていないか
・別なクラスになっても気持ちは一つと誓ったあの時の気持ちを忘れていないか

いつか「ちょっとそこの君,小動物に好かれすぎているぞ」と職務質問をされたい.

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