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September 29, 2010

借り上げ君

通勤電車内で,何か異物を踏んだ.降りるときに踏んだ物を見たらカラアゲだった.カラアゲ好きとしては,やり場のない悲しみと怒りを感じた.
しかし,何故カラアゲが通勤電車の床にあったのだろう.「家出のドリッピー」とかそういう感じか.弁当箱という家から,家出をしたカラアゲのイングリッシュアドベンチャーとかそういうあれか.
家出のカラアゲは通勤電車内で踏まれるまでに,大変な冒険をしてきたのだと思う.

ある日カラアゲは冒険の途中で足の悪い老人に出会う.
「ご老人,難儀をされておるようですね」
「へえ,この足のせいで体の自由がきかんのです.妻や娘に苦労をかけてしもうて,情けのうて仕方がないですわ」
「それは,御苦労をなされておいでだ」
カラアゲは手にした杖で地面をたたいた.すると地面が割れて温泉が湧き出したという.
「ご老人,この湯に使って足を治すが良かろう」
「ありがとうごぜえますだ」
草津温泉,開湯の瞬間である.

「光秀様に早く知らせねば」
カラアゲは馬を走らせる.冒険の途中で生き倒れになった所を明智光秀に助けられ,家臣となったカラアゲは,明智光秀との昨日の会話を思い出す.
「光秀様,明日の夜,信長様が本能寺でびっくりパーティーをやるらしいですよ.参加者は趣向を凝らして信長様をびっくりさせる」
「ほお,カラアゲ,よく知らせてくれた.それは楽しみじゃな」
「噂ですが,秀吉様は,全裸で裸馬に乗って本能寺に駆けつけるそうですよ」
「それは負けてられんな.家康はどうするか聞いておるか」
「これも噂ですが,家康様は,秀吉様とは逆に,全裸で裸馬をかついで本能寺に駆けつけるそうです」
「そうか.全裸が二人はいるということじゃな.全裸はもういらないな…….よし,信長様に反乱を起こすふりをしちゃおうかな」
「いいですねえ,それでは私が適当な所で『ドッキリ』と書かれたパネルを持って,出ていきますよ.信長様もびっくりしますよ」
「よし,決まりじゃな」
昨日の光秀の嬉しそうな顔を思い出しながら,カラアゲは馬にムチを入れ,スピードを上げる.このままでは光秀に追いつかない.光秀は「今宵は宴じゃ.敵は本能寺にありじゃ.よーし,僕は思い切って寺に火を付けちゃうぞ」と言って兵を引き連れ,張り切って本能寺に向かったという.
「光秀様に早くお伝えしなければ.びっくりパーティーは延期になりましたと」
馬を駆るカラアゲ.しかし,カラアゲは間に合わず,光秀はびっくりパーティーを始めてしまう.
本能寺の変である.

江戸の時代が終わり,明治時代が幕を開ける.
カラアゲは早速「ザンギリ頭」にしてみた.そこで自分の頭を叩いてみた.痛快な音が街に響き渡る.街行く人は,その音を聞きカラアゲに目を向ける.
「文明開化の音だ」
誰からともなく発した声が,皆の声となり,大きなうねりとなり街から日本へと響く.
「文明開化,文明開化」
カラアゲのザンギリ頭を叩いて出た音こそが,文明開化の音.日本で初めて文明開化の音を立てたのこそが,カラアゲだ.

冒険の末に通勤電車に到着したカラアゲ.今もどこかでイングリッシュアドベンチャーだ.

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