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February 28, 2011

高速に拘束

「詳しくは『○○○』で検索」や「続きはWebで」という広告がある.広告の内容を詳しく知りたい人や興味を持った人は,検索をして見て欲しいというやつだ.ネットワーク社会の現代,広告だけでなくもっと活用できないだろうか.

山本タモツ(45歳)は,久しぶりに帰った実家で見つけた日記帳を手に取る.若かった頃を思い出しながら懐かしくページを捲っていると,高校生の夏休みに付けた日記に,「高三の夏休み」で検索,の文字を発見
早速検索して見てみると,あの頃の日々が蘇る.自分の知らぬ間に記録されていた高三の夏休みの自分.自分以外に誰も興味を持たないと思うあの時の自分.甘酸っぱい思い出に胸がキュンとなり,気が付くと涙が流れている.
ありがとうネットワーク.

丸輪太郎君は,好きだった同じクラスの若林コズエさんを校舎裏に呼び出して告白.
「若林さん,実は今まで好きだったんだ」
若林さんは,はにかんで答える.
「えっと,続きはWebでね」
若林さんは恥ずかしそうに駆け去る.
ドキドキしながら丸輪君が押す検索ボタン.検索結果を辿ると,コズエさんが映った動画が流れる.
よく告白されるコズエさんは,断る手続きをネットワーク上のデータを使って共通化.合理的なコズエさんは,間違いなくデキル女だ.
丸輪君は動画の再生回数を見て涙を流すのだ.

ある病院の中の病室の一つに担当医師の指示の元,久田渋重(98歳)の家族が呼び寄せられる.渋重は朦朧としながら,ベッドの周りに集まった家族に話をする.
「ワシの遺産の分配じゃが……」
「お父さん,だめだ.まだ死じゃだめだ」
「おじいちゃん,おじいちゃん」
そんな家族に向かって渋重は繰り返す.
「ワシの遺産の分配じゃが……」
固唾を飲んで耳を澄ませる親族一同.
「続きはwebで」
そう言い残し渋重は事切れる.
親族一同がブラウザを立ち上げて映し出されたのは,元気いっぱいの渋重.渋重は,仮想空間で生き返る.
「ワシを見ているということは,本体は死んだということじゃの.じゃあ,これからはこっちが本体じゃ.ワシの遺産はワシの使いたいように使う」
そう言って仮想空間の中に消えて行く.寿命を限りなく伸ばした渋重.遺産相続するつもりだった息子達は舌打ちをする.

逃亡中の容疑者が,逃亡中にメールを受信.メールのタイトルは「続きはWebで」.
Webブラウザを立ち上げると,容疑者はその場で逮捕される.オンラインで容疑者が身柄を拘束される,近年警察で開発されたオンライン逮捕と呼ばれる技術だ.オンライン逮捕された容疑者はそのまま拘置所に転送.容疑者は高速ネットワークを使って拘置所に転送される.
「容疑者を待たせません」が合言葉の最新技術.逮捕の手続きを簡素化し,拘置所への転送まで自動化されているので,コストを大幅に削減.最新技術が,時間とお金の無駄をカットし,検挙率をアップさせる.

面倒くさいことに出会ったら,積極的に「続きはWebで」と言って逃げたい.

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February 14, 2011

埋め立て

会社のオフィスには「埋め立てゴミ」と書かれたゴミ箱がある.何を捨てればいいのだろうと考えてしまう.ゴミ箱にゴミを入れる側の人としては,捨てたゴミが埋め立られようと埋め立てられなかろうとどちらでも良い.ゴミに合った最も良い処理の仕方をしてもらえればそれで良い.なので,何をそこに捨てるのかをはっきりと書いておいてもらえればいい.
ひょっとしたら,何を捨てるのかはっきりと書けない理由でもあるのだろうか.ひとことでは説明し辛いゴミ.それならば,それで積極的に活用したい.

「埋め立てゴミ」と書かれたゴミ箱の前で涙を流す山本タモツ(35歳)さん.
タモツさんは,小さな頃から野球が得意で神童と呼ばれ,地元の少年野球団ではエースで4番で大活躍だった.そして,高校は野球の強豪校に入学.甲子園にレギュラーメンバーとして出場し,チームは準優勝.高校卒業後はプロ野球チームに入団した.
自分は野球の天才だと思っていたタモツさんだが,それは間違っていたことに気が付いた.プロ野球選手として活躍するのは,自分よりも遥かに上手い選手達.それでも,タモツさんは頑張ったが,結局一軍の選手になることもなく,二軍で大した成績を残すことなく17年が過ぎた.
タモツさんは,「こんな物があるから未練が残るんだ」と甲子園の土を「埋め立てゴミ」のゴミ箱に投げ捨てる.今年で野球選手はおしまい.来年からは,「盗塁弁当」を売る弁当屋だ.

オシャレに気を使う会社の同僚の長井シゲル(28歳)さん.
彼のチャームポイントは,長く伸ばした特徴的なモミアゲだ.ツヤツヤと光るモミアゲは,見る者の心を逆撫でする.そんな時に活躍するのが「埋め立てゴミ」のゴミ箱だ.
素早くシゲルさんのモミアゲを掴み,有らん限りの力で引っ張り抜く.のた打ち回るシゲルさんを背にしてモミアゲを「埋め立てゴミ」のゴミ箱に捨てる.
明日からは,モミアゲに心を逆撫でされることなく心安らかに働ける.職場の快適な環境作りに貢献する「埋め立てゴミ」のゴミ箱だ.

「埋め立てゴミ」のゴミ箱の前にカモメ第四小学校の小学6年生の児童が集合する.中には啜り泣く女子児童の姿も見える.先生が,児童達を前に声を上げる.
「よし,それじゃあ.みんなの思い出をカプセルに詰めたな」
啜り泣いていた女子児童は声を出し,ざわついていた男子児童はしんとなる.
「捨てるぞ.いいな.お前達は卒業してバラバラの中学に行くかもしれない.しかし,皆で過ごした思い出はこのカプセルの中でいつまでも一つだ」
思い出の詰まったカプセルを「埋め立てゴミ」のゴミ箱に捨てる.ちょっとしたタイムカプセルだ.

「埋め立てゴミ」のゴミ箱に積極的に思い出的な物を捨てていきたい.

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February 04, 2011

負けたい試合

特にサッカーの日本代表チームの試合で言われると思うが,「負けられない試合」や「落とせない試合」がというのは何なんだろう.試合なのだから,勝たなければならないのは当たり前だ.
もしかしたら,自分が知らないだけで,「負けてもいい試合」や「落としてもいい試合」というのがあるのではないのだろうか.安心して負けられる試合があるからこそ「負けられない試合」があるし「落とせない試合」があるのだろう.

観客がスタジアムに詰めかけ,日本代表の試合が始まる.中継のアナウンサーと解説者も準備万端だ.
「間もなく試合開始です.さて,日本代表,本日はどう戦いますか.解説のセドリック越前さん」
「今日の試合は,尻風船ですよ.目が離せませんね」
「えっ,サッカーはどうしたんですか」
「サッカーは中止になりました.主審のカルロスさんが肉離れを起こしたみたいです.代わりに尻風船になりました」
「尻風船というのは何ですか」
「ヘリウムガスを入れた風船に糸を付けてですね」
「糸を付けてどうするんですか」
「その糸を尻に挟みます.誰でも尻割れてますよね.あなたの尻は割れてますか」
「割れてます」
「風船の糸を尻に挟んだまま100メートル走ります」
「はあ」
「速い方が勝ちです.風船が尻から飛んで行ってしまったら失格です」
風船を飛ばさないように尻を締めて内股気味に走る日本代表.負けてもいい試合がここにある.

観客がスタジアムに詰めかけ,日本代表の試合が始まる.中継のアナウンサーと解説者も準備万端だ.
「間もなくホイッスルです.さて,日本代表,本日はどう戦いますか.解説のセドリック越前さん」
「今日の試合は,そのままズボン腰捻りですよ.目が離せませんね」
「えっ,サッカーはどうしたんですか」
「サッカーは中止になりました.審判全員で茶話会をするそうです.代わりに,そのままズボン腰捻りになりました」
「いや,でも,そのままズボン腰捻りって何ですか」
「選手達は,パンツを穿かないでそのままズボンを穿いてですね」
「はい,そのままズボンを穿いてどうするんですか」
「腰を激しく,素早く何度も捻ります」
「はあ」
「パンツを穿かないでズボンを穿くと新鮮な気持ちになりませんか.何かこう,解放感のようなものがあって爽快感が得られるみたいな」
「否定はしませんが」
「その爽快感を選手一丸となって味わうわけですよ.選手は気持ちがいいに決まってますよ.より爽快感を楽しんだチームの勝ちです」
「そうですか」
「私が若い頃も良くやったものです.それが忘れられなくて,ほら,私,パンツ穿いていませんよ」
「私もパンツを穿いていません」
そのままズボンの二人も腰捻り.確実に負けてもいい試合だ.

観客がスタジアムに詰めかけ,日本代表の試合が始まる.中継のアナウンサーと解説者も準備万端だ.
「いよいよ始まります.さて,日本代表,本日はどう戦いますか.解説のセドリック越前さん」
「今日の試合は,ナメクジ引きですよ.目が離せませんね」
「えっ,サッカーはどうしたんですか」
「サッカーは中止になりました.審判は結構疲れたので休むそうです.代わりにナメクジ引きになりました」
「いや,でも,そのナメクジ引きって何ですか」
「生きているナメクジを引っ張ってですね」
「はい,引っ張ってどうするんですか」
「長いナメクジにするんです」
「ええっ」
「あっ,勿論ナメクジを殺しちゃだめですよ.引っ張ったナメクジが切れちゃいけません.お子さんの教育にも悪いです」
「はあ」
「生きている長いナメクジを作るんですよ.専門的には,長ナメクジなんて言われてるんですけど,御存じないですか」
「それはいいですが,勝敗はどうやって決めるんですか」
「長い方が勝ち.短い方が負け.シンプルでいいでしょう.時間は前半45分,ハーフタイムを挟んで後半45分.時間を掛けてゆっくりナメクジを伸ばしましょう.ハーフタイムの間はナメクジを伸ばせないので,ハーフタイムの間にナメクジは元の長さに戻ってしまうかもしれませんよ.ドキドキしますね.無理なくゆっくり,これが基本です」
逆に負けたい試合がここにある.

なんでも解説できるセドリック越前の博識ぶりだ.

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